問題提起本『がん患者学』の紹介
柳原和子さんに聞く:
病院での医療はひとつの手だて。
「医者に隷従する必要はないんです。」
晶文社 600ページ 本体価格2600円
患者を取り違えたり、薬を間違えたり、健康な部位を切り取ってしまったり、信じられない医療ミスが続発している。それらは現代の医療が患者と正面から向き合っていないことを示しているのだが、それでも医師にすがるほかないと考える弱い患者が大多数だ。そうした受け身なだけの物言えぬ患者から、自分の病を自分で管理し、自立した患者となる道筋を模索するのが『がん患者学』である。
「裏金を渡してコネを作ったりするのではなく、まともな関係として、私たち患者が医者とどう付き合っていくべきかというノウハウを獲得したい、と思ったんです。がんになると周りから同情され、それに見合って患者は卑屈になる。だけど、病気になるのも人間としてのプロセスなのだとみれば、病院での医療も重要だけど一つの手だて、ある側面でしかない。人はそれ以外のさまざまな要素を持って生きているのだから、医者に隷従する必要はないんです」
自らも卵巣がんの告知を受け、それと闘い、付き合っていくために、告知後5年以上生存している患者の体験をつぶさに聞いた。それが本書のもとになっている。取材としてではなく、自分のためにしたことだった。
医師が認めない丸山ワクチンを試したり、健康食品や漢方薬を用いたり、食事療法を実践したり、気功法を続けたり、さまざまな患者の姿が紹介される。「そうした代替療法を持つことで医者と対等の関係ができて、心のよりどころができるんです。
西洋近代医学という狭い枠にとらわれている医師より、患者のほうが病気を乗り越えていく可能性がある。それを私は、薬害エイズ訴訟の患者さんの生き方から学びました。がん患者にも、そうなってほしいんです」なぜ私はがんになったのか、なぜ治りにくいのか、その問いに医師は答えられない。教科書に書いてないから、と恥じらいもなく平然と答える。最大公約数と平均値、そこに含まれないものは例外としてはじかれる。
そうしたマニュアル化された画一的な医療現場に対して、それぞれの患者の病状は個別的にあらわれる。いわばコンビニ化された病院に対する患者の反乱が、総体としての幅広い医療を実現すると考えるのだ。
「教科書に載ってなかったら、私の事例を載せなさいって迫る、そういう強さを持ちたいんです。がんの本の多くは、結局死をまぬがれないと書く、どう死を受容するかなんて。だけど、たとえ一か月でも生きられる、と励ますものを私は書きたかったんです。これを描くために物書きになったのだといまは思います」
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