ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 実は私の妻は根っからのハーブ療法のファンではないんです。本当のところ私がハーブの調合やら治療用の野菜スープの調理などで台所をめちゃくちゃにされるよりもむしろ医者に行って錠剤をもらう方が好きなようなのです。でも主婦の仕事は根っから好きなようで、私のハーブ研究には懐疑的な妻ペギーも小さなアロエの鉢植えを台所の窓際にいつも置いていて一年を通して何回かのやけどの時にはそのジェルを使っているようなのです。
 私の事務所の秘書もやけどにはアロエのファンです。かつて彼女がアウトドアですっかり眠りこけて強い日焼けで足や足首がひどい状態になってしまいました。そのときアロエに頼ったので、とても効果的に痛みを軽減できたのです。
やけどの程度は数字で表現
 熱傷にはその程度によって3段階に分けられます。1度の熱傷は皮膚の最も外側の皮膚組織の障害で赤く、さわると敏感な程度です。たとえば、普通の日焼けは1度のやけどといえます。やけどが水疱になってしまうと、傷は皮膚を貫きとても痛さを伴い2度のやけどに達します。やけどの最悪の程度は3度のやけどで、奇妙にも全く痛みを伴わないときがしばしばあります。このわけは、傷が皮膚の相当深くまで達するので、いたみの信号が脳に伝達する神経組織を破壊してしまうからなのです。3度のやけどは医学的に緊急事態で必ず専門医のケアが必要、普通入院加療が必要とされます。2度のやけどでも体表面の四分の一以上のやけどはどんな場合でも専門医による加療を行うべきです。
やけどのための「緑の薬局」

 1度のやけどとそれよりも範囲の小さい2度のやけどには、ハーブ的な治療法がたくさんあり、やけどの苦痛を和らげて快復を早める効果もあります。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ アロエ(Aloe/ Aloe vela)
 アロエは古代からやけどを始めいろいろな外傷の治療に使われてきました。が、これは民間療法というわけではありません。多くの研究が示しているように、この多肉植物の固い皮を切り裂いて取り出した中身のジェルにはやけどの苦痛を和らげる効果があり、ガン治療の放射線治療が原因のやけどにも治療効果があるのです。
 友人のバロ・タイラー博士はインディアナ州ウエスト・ラファイエットにあるプルド大学の生薬学(天然産物による薬学)名誉教授で、多くの臨床を引用して「アロエのジェルはやけど、けが、凍傷に非常に有用な治療薬になる」と述べています。科学者たちはなぜアロエがやけどの治療に即効効果があるのか納得しかねているようですが、事実ハーブにはいろいろの有益な効果が見られるのです。私たちの研究では、アロエにはやけどをした皮膚の面積を早く回復するのに必要な材料をより多く運んでこれるように、やけどした組織への血流の量を増加させることがわかっています。
 アロエには酵素のカルボキシペプチダーゼ(carboxyeptidase)やブラジキニナーゼ(bradykininase)という痛みをやわらげて炎症を軽減したり赤変や腫れを抑える効果のある物質が含まれます。加えて、アロエのジェルは抗菌作用があるのでやけどから来る感染症を予防する助けになることもあるのです。ご家庭の中で最もやけどの起こりやすい場所、キッチンにはアロエが必需品です。やけどになったらまず第一番目に選ぶハーブだといえます。
 不幸にも、FDA(米国食品医薬品局)は私の意見には同意していないようですが。FDAにある2つの委員会は「アロエはやけどの治療に有効である。」というには"証拠が不十分"であるとしています。FDAが"不十分な証拠"と言う時、その証拠がそこに無いとか、はっきりしないとか、たくさん無いという意味ではないのです。その意味は数年前、その委員会が店頭薬の評価をしたとき(この頃米国ではハーブ療法の人気が引き潮のように引いた時期でした)、だれもこのハーブの研究で得た納得させる結果を委員会に提出しなかったのです。なぜそうしなかったのでしょう?ハーブの信奉者はすでにこの薬効に確信を抱いており、しかもアロエが承認されても製薬会社には何の得もなく、しかもだれでも育成できる植物なので資料を提出するはずの会社にとってはなんら利益にならなかったからです。
★ エキナセア(Echinacea/Echinacea様々な種)
 アメリカではほとんどの人がコーンフラワーという名で親しんでいるエキナセアは体内の免疫反応を活性させる効果があります。というわけで、私がやけどをしてしまったらエキナセアのチンキを取り出してティースプーン1,2杯飲む事にしています。(けれどもこのエキナセアを口にするとき、一時的に舌がひりひりしびれたように感じますが、この副作用はまったく無害なものです)
 やけどをしたときに最も注意をしなければならないことは感染症で、エキナセアで増強した免疫力は感染症からやけどの傷を強力にガードしてくれるのです。さらに、私の場合はチンキを数滴やけどした患部にも落として塗っておくのです。ほとんどの人は知らないことですが、エキナセアには穏やかな防腐力もあるので、やけどの患部の化膿を予防するのです。
★ ガーリック(Garlic/Allium sativum ニンニク)およびオニオン(onion/A. cepa タマネギ)
 アフリカからローマへそしてアメリカに来たこのハーブや近縁種(チャイブ、ニラネギ、シャロット)はやけどの患部に直接使います。これらの植物には明らかな防腐効果という財産を持っています。使うときには良くマッシュ(すりつぶ)して湿布薬のようにして、やけどの患部に貼ります。
★ センテラ(Gotu kola/Centella asiatica ツボクサ)
 自然物理療法内科医はこのビタミンCの含有度の高いハーブをやけどの治療に勧めています。センテラが含むビタミンと3種の成分のコンビネーション(asiatic acid, asiaticosideand madecassicacid)が皮膚を修復するコラーゲンの合成力を増強するのです。
(コラーゲンは一種のタンパク質で皮膚の基礎となる組織を形成します。)
★ ラベンダー(Lavandula、多種あり)
 1920年代のこと、フランスの香料科学者ルネ・モーリス・ガットフォスが勤務先の研究所で手にひどいやけどを負ってしまった!!とっさに手近の液体(ラベンダーオイルの容器だった)に手を突っ込んだのでした。痛みは即座に引き、やけどの傷跡は全く残ることはなかった。この出来事はアロマテラピーの発展の引き金になったようで、植物から採れるいろいろな種類のエッセンシャルオイルをヒーリング(癒し)に使われるようになっていきました。
 カモマイルやカンファー(樟脳)、ユーカリ、ゼラニウム、オニオン、ペパーミント、ローズマリー、セージなどのようなエッセンシャルオイルにもやけどの治療に良く効く事で人気を集めているのです。でもアロマセラピストたちが最も賞賛するものはラベンダーオイルなのです。台所の窓敷居のアロエのとなりにこのオイルの小瓶を置くことを是非とも検討して下さい。そして必要なときにはアロエのジェルにラベンダーオイルを垂らしてやけどの患部に湿布して下さい。(ここで注意すべき事はエッセンシャルオイルは口からは絶対に体内に入れないこと、少量でも有害になるものもあります。)
★プランテーン(Plantain/Plantago、多種あり)
 プランテーンはアメリカでやけどしたときハーブ療法で使われる一番ポピュラーなものの一つです。
 この植物の新鮮な生葉のジュースは軽い程度のやけどに直接使います。私の場合は幾度となく利用していて、痛みが和らぐのがうれしいですね。
★ セントジョンズワート(St.-John's-wort /Hypericum perforatum セイヨウオトギリソウ)
 ドイツのコミッションEというドイツの厚生省に相当する政府機関に対してハーブ治療についてアドバイスを与える科学者のグループはこのセントジョンズワートが抗炎症効果が高く、1度の程度のやけどに使う外用薬に最適だと賞賛しています。あるドイツの研究ではセントジョンズワートの軟膏がやけどの痛みを素早く和らげ、傷跡も軽減させるとの結果を示しています。
 アメリカでこのハーブを見つけるには藪の中を歩く必要がありますが、チンキ状のものは簡単に作れるんですよ。50から100mlの野菜オイルにこの市販のドライ・ハーブ(花が付いている方がよいです)をティースプーン1,2杯をつけ込むだけで自作出来るんです。