ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 1989年のことですが、当時米国農務省の栄養学リサーチセンター局長のウォルター・メルツ医学博士から手紙が届き、「この雑草のような草を同封します。これは私の糖尿病患者がトリニダート島から持ってきたものです。彼女は成人になってからの糖尿病患者で、この植物を使うまではインスリン療法を行っていました。今は、この草をベルモット酒につけ込み、1日2回この酒を少量飲んでいるようです。そして6ヶ月前から彼女の血糖値は正常値に収まっています。この植物がどんなものなのかそして、できれば効果のある成分を教えていただけないでしょうか。」とありました。
 私のハーブ療法の知識によれば、ドクターメルツが手紙に添えて送ってきた標本はジャッカス・ビターといって四季咲きのアメリカブタクサに似たような植物でした。このチンキ液は西インド諸島の由緒ある部族クリオール・カリブ人達の糖尿病やその他の症状(風邪、発熱、マラリア、月経痛など)へ伝統的な治療薬ということなのです。このハーブが本当にほかの病気にも効くかどうかは私にはわかりませんが、このジャッカスビターが血糖(ブドウ糖)レベルの安定に役立つという確かな研究があるのです。実際に糖尿病のコントロールができているそうです。実験動物を使った研究のいくつかに、この植物から抽出したチンキ液には血糖を下げるインスリンを含むいろいろな医学的な表現で言う"高血糖低減効果"がみられるのです。高血糖というのは糖尿病の患者さんにとって大変やっかいな問題を引き起こす原因になるのです。もし動物への服用量を人間に換算すると、68kgの人が同じ抗高血糖効果を得るには約450グラムのハーブを消費しなければならないのです。しかも、ドクター・メルツ氏の手紙によると、人によってはそれよりもずっと少ない量で効果を上げていることになります。そのハーブは米国内では入手困難なのですが、健康食品の店や通信販売などの会社で入手することはできるとのことです。
体内エネルギーの供給に問題
 二千年以上昔の古代人は蟻が群がるほど奇妙に強い甘みのある尿を出す人々がいることに気が付いていました。(尿の味を調べることは多くの文化圏で健康診断の道具に使われていました)その真性糖尿病(Diabetes mellitus)の状態はギリシャ言の"源泉"とラテン語の"蜂蜜"という言葉から名付けられました。
 糖尿病の原因はインスリンというホルモンが膵臓で造られなくなるか、造られたインスリンが体内で使えなくなる状態の時に起こります。身体に必要な主な燃料のグルコース(ブドウ糖)は、インスリンが不足するか、働かなくなると体内の細胞に取り込まれません。インスリンが欠乏すると、グルコースは血流中にたまっていき排尿されるので古代人が気が付いたように甘い尿になってくるのです。
 糖量のバランスが崩れるとまた尿量が増加し、のどの渇きを感じます。糖尿病が怖いのは体内中の毛細血管(末梢血管)をさらに細くする原因になるのです。血糖値が高いほど、毛細血管が細くなっていくのです。この状態が起こると、血管は必要な血液を運べなくなり、血液の循環を阻害していくのです。血液の循環が弱くなると、糖尿病の抑制がさらに悪くなり、腎臓病やケガが治りにくくなったり、足や眼の病気を引き起こしてくるのです。糖尿病患者の四肢の障害は、米国内で事故が原因ではない四肢切断手術の件数の半分を占めているのです。
 また糖尿病は脂肪代謝を変えていき、太い血管の内壁にコレステロール性のプラークが溜まっていって、血管障害へのリスクを増加させていきます。つまり糖尿病患者は少なからぬ心臓疾患のリスクを負っていることになるのです。
どっちの状態か、どっちの方法か?
 糖尿病には実際には2つのタイプつまりタイプ1(インスリン依存型)とタイプ2(インスリン非依存型)があります。タイプ1の糖尿病の患者さんは血糖値のコントロールのために毎日インスリンを注射で注入しなければなりません。タイプ2に属する糖尿病の患者さんはインスリンを体内で造ることが出来るのですが、必要な量に反応することが出来ないのです。一般的な糖尿病のタイプはタイプ2が圧倒的に多く総患者数の85から90%を占めます。概して肥満と関連づけられています。(訳者注:日本人の場合は肥満との関連もありますが、遺伝的に糖尿病になりやすいことが最近の研究で明らかになりつつあります。)
 タイプ2の糖尿病患者は普通、減量とダイエット法を通して血糖値をコントロールすることができ、しばしば医者や栄養士との面接療法も取り入れることで効果をさらに増大することができるでしょう。タイプ2の人々では医薬品の使用を避けることは十分可能だし、私はむしろ出来る限りこの方法を取り入れる方をお勧めしたいと考えています。
 文献を見ると、食餌療法は医薬品に頼る方法よりも、より安価により効果的にそしてより楽しくできることを示しています。おそそ6百万人の米国人が糖尿病と闘っています。ほとんどの人がその方法を知らないのです。心臓病や多くのガンと同じように、糖尿病は西洋文化と食事内容に大変強い関係があります。非西洋文化圏の人々でも、とりわけアメリカ・インディアンやオーストラリアのアボリジニはそれまでの伝統的な食餌内容から、より西洋化にスイッチしている結果、糖尿病患者が劇的に増加しているのが現状です。
糖尿病撃退のためのナチュラルな戦術
 まず、糖尿病は重大な状況だということを自覚することです。もし、あなたがこの病気ならば、とにかく医者の管理を受けること。これは絶対です。
 でもあなたの体の状態を管理する手助けができる良い方法があります。それは肥満という状態はタイプ2の糖尿病に強く関係があるので、体重コントロールが糖尿病の自己管理の大変重要な要素なのです。低脂肪食や日常の運動(ちょうど良い強さ)がその方法です。肥満の人にはつらいですが、運動量を徐々に上げていき毎日約1時間程度早足で歩き続けるようになるまで努力してください。歩く方法は良く知っているはずですから、特別な道具やスポーツクラブなど必要はないのです。もしもあなたが全く運動の経験がなくても、絶望しないでもいいです。ウォーキングや緩やかな運動プログラムは最小の努力で最大の効果をもたらすのです。
 さらに栄養補助食品の利用も糖尿病にまつわる合併症の予防に効果のある症例もでているようです。ビタミンB6やC、E、クロム、マグネシウム、マンガン、リンや亜鉛それにオメガ3とオメガ4脂肪酸などを含む栄養補助剤が役に立つでしょう。
 いずれにしろあなたのかかりつけの医者にたのんで、あなたの症状にあった食生活をプログラムしてくれる管理栄養士を紹介してもらうようお勧めします。
糖尿病のための緑の薬局

 運動と先にお話しした栄養補助剤に加えて、血糖値を正常に戻す役に立ついろいろのハーブを試すのもよいでしょう。第一はジャッカスビター、これについてはすでに述べました。その他のハーブ類としては…
"★"の数は効果の高さの指標です。
★ ★★ フェヌグリーク(Fenugreek/Trigonella foenum-graecum コロハ)
 フェヌグリークの種子の半分は(重さで)ゴムのり状で解溶性の繊維です。その中には血糖値をコントロールする効果のある6種類の成分を含有します。それにフェヌグリークは総コレステロール量を下げながら善玉コレステロール(HDL)を増やします、それは糖尿病の人々すべてが持つ心臓血管の疾患の危険を予防する事が出来るという意味なのです。
★★★ オニオン(Onion/Allium cepa タマネギ)
 タマネギは古くからアジア、ヨーロッパ、中東で糖尿病のための食餌療法の食材として歴史を持つ食べ物でした。当然だと私は思います。
 タマネギ―特に黄皮―にはケルセチンという糖尿病性網膜症のような糖尿病が基になる眼病にとって最良の予防成分がもっとも豊富に含まれています(タマネギの皮は黄色染料にも使われています)。
★★ 豆類(Beans/Phaseolus 各種)
 多くの研究で証明されていることですが、特に豆類のような解容性繊維の多く含む食材には食後の血糖値の上昇を抑えて、さらにその後の血糖値の低下を遅らせ結果的に血糖値を望ましいレベルに近づける効果が期待出来るのです。
もし、私が糖尿病を患っていたならば、なるべく豆類を使った食べ物やスープをとります。(豆類とオニオンの両方の効果を取り入れるには、私のお料理レシピの「糖尿豆スープ」を試してください。)
★★ ビター・ガード(Bitter gourd/Momordica charantia ニガウリ)
 バルサム・ピアとして知られているこのハーブ(野菜)には血糖値を整える能力が特に優れ注目を集めています。1960年のインドで出版された論文で初めて取り上げられて以来、いくつかの研究がこのビター・ガードが糖尿のコントロールの役に立つことを示しています。ある実験では、毎日5グラム(ティースプーン2杯)のビターガードの粉末を摂っている患者の血糖値が54%下がる効果が示されました。別の研究では、ビターガードのエキス液50ml(四分の一カップ)摂取することで約20%の血糖値が低減されたとのことです。
 もしもエキス液がお好みでなければ、ビターガードをお料理の添え物にして食べる方法もありますね。(訳者注:ニガウリは沖縄のポピュラーな料理の食材で知られています。)それにジュースにしてもいいものです。もしくは煎じ出す方法:新鮮なビターガード120グラムを刻んで0.5リットルの水とともに水分が半分くらいになるまでとろ火で煮出します。濾したものを1日一回飲みます。
お料理コラム**糖尿豆スープ**
 豆類に含まれる繊維質には特に血糖値のコントロールに有効、オニオンの黄皮もケルセチンという有益な成分を含有しています。スープを作る時のオニオンの黄皮はそのまま煮込み、黄皮の成分をしっかりとスープに移しましょう。
材料:
水2カップ
タマネギ(黄皮はむかない) 1個 四つ切りにしたもの
インゲンマメ約400グラム 水洗いしたもの
ニンジン小1個 賽の目に刻む
ピーナッツ半カップ
フェヌグリークの芽四分の一カップ又はこの種子ティースプーン半分
ゲッケイジュの葉2枚
ニンニク4片、刻んでおく
シナモン適宜:細かく挽いておく
クローブ適宜:細かく挽いておく
ターメリック適宜:砕いておく
調理法:
大きめのシチュー鍋を程良く熱し、水とオニオンを入れて沸騰させる。
インゲンマメ、ニンジン、ピーナッツ、フェヌグリークの芽または種子、ゲッケイジュの葉、ガーリック、シナモン、クローブとターメリックを加えます。沸騰したら火を弱めトロトロ煮込みます。ふたをして30分、またはオニオンが柔らかくなるまで。
オニオンを溝の付いたスプーンなどで取り出し、黄皮は捨てます。
オニオンの実をフォークでつぶしてシチュー鍋に戻します。ゲッケイジュの葉を取り除いて、出来上がり。
以上で4人分の分量です。
★★ ガーリック(Garlic/Allium sativum ニンニク)
 タマネギのようにガーリックには血糖値をコントロールする能力が優れているようです。「もっとガーリックを食べましょう!!」。出来れば生のガーリックが良いのですが、軽く調理したものでもよいです。
★★ マカデミア・ナッツ(Macadamia nut/Macadamia 各種)
 1986年からタイプ2の糖尿病患者のための食事内容の勧告では、必要カロリー量の15から20%をタンパク質から取り、脂肪は35%以下に落として、55から60%を炭水化物で摂るように勧めています。より最近の研究では、今までのものに替えて、より身体に良い食用オイル(単不飽和脂肪酸:MUFAs)を使うと炭水化物のいくらかがコレステロールのレベルを増加させないで血糖値のコントロールを改善する働きがあることがわかってきました。
 オリーブ・オイルはもっとも特筆すべきMUFAsを含む食用オイルなのです。オリーブオイルが嫌いな方や単にMUFAsをいろいろな方法で取り入れたい方はマカデミアナッツを試すべきです。オイル分の59%がMUFAsなのです。そのほかのMUFAsの供給源としてアボカド、ピスタチオ、カシューナッツ、ピーナッツやブラジルナッツなどが挙げられます。
★★ マーシュ・マロウ(Marsh mallow/Althaea officinalis ウスベニタチアオイ)
 マーシュ・マロウの根はペクチンという名でよく知られている解容性の繊維がとても豊富(乾燥状態の重さの35%)なのです。このペクチンは血糖値を低く抑える大変に有効な成分です。マーシュ・マロウの繊維状の根を一晩水に浸して利用するか、さもなければ商品になったものを使う手もあります。
 ペクチンの供給源としてはニンジン、バラの実(訳者注:実には炎症の原因になる毛が入っているので、お茶にするときは濾して取り除くこと)リンゴ、イチジクがあります。
★★ ピーナッツ(Peanut/Arachis hypogaea 南京豆、落花生)
 前記の豆類のようにピーナッツには血糖値を低く保持する効果があります。高脂肪ということが非難の的にされやすいですが、私はとても好きでよく食べるしその価値ある効果をマスコミなどを通じて広めたいところですね。
★★ ティー(Tea/Camellia sinensi 茶)
 インドではブラック・ティーに抗糖尿病の効果が見られたとの研究があります。その研究ではブラック・ティーのエキスには研究用動物の実験ですが、血糖値を著しく軽減したとのことでした。もし私が糖尿病を患っていたら、お茶をどんどん飲むでしょう。
 お茶にもう一工夫して"血糖低減スパイス"を加えたものはいかがでしょうか。実際、私のつくったインスリネードを試してください。(訳者注:インスリネードとはインスリンとレモネードをもじった言葉のようです。)
お料理コラム*インスリネード*
 研究の結果、たくさんのスパイス類が体内でインスリンの働きをより有効に働かせる効果を持つことが確かめられています。ベイ・リーフ(ゲッケイジュ、ローレル)シナモン、クローブ(チョウジ)、ターメリック(ウコン)などがありますね。
 作り方は簡単、ブラック・ティーのポットに上記のスパイスを一つまみづつ加えるだけ、熱湯を入れて10分ほど浸しておきさまします。さらにコリアンダー(コエンドロ)とクミンをさらに加えても良いです。この2種のスパイスはさほど薬効の強いスパイスではないですが、いずれも動物実験の結果、血糖値の低減の効果があることが明らかにされています。フェヌグリークのお好きな方は同様に一摘み加えても良いです。
★ ベイ(Bay/Lauras nobtli ゲッケイジュ、ローレル)他のスパイス
 私が米国農務省(USDA)にいた頃の同僚だったリチャード・アンダーソン博士はこのベイの葉を500ミリグラム(ティースプーン半分)程度の量でインスリンの働きを良くする効果が大きいことを証明しています。この葉は実験動物で血糖値を下げることを明らかにされました。
 前記の"糖尿豆スープ"に加えて、血糖値のコントロールに効果のあるシナモン、クローブ、ターメリックと同様に使っても良いです。
★ グルマー(Gurmar/Gymnema sylvestre ギムネマ)
 少なくとも4人のインド人の研究者達がこのハーブを研究、インドで糖尿病の民間治療によく使われているようです。このティーはインスリンの体内生産量を増大させるような働きがあるのです。インスリンを作り出す膵臓の細胞つまりランゲルハンス島といわれる細胞の数を実際に増やす、興味をそそる証拠がいくつかあるのです。米国内の研究熱心なハーブ商社はすでにこのハーブの取り扱いを始めているようです。