ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 前立腺は男性だけが持っている小さな線性の器官です。直腸の真上に位置して、精液を供給する粘液をここで生成するのです。他の身体臓器と異なり、加齢に従ってこの前立腺は肥大していき、この状態はいわゆる前立腺肥大症(良性前立腺過形成BPH)として知られています。
 40歳までの約10%の男性にある程度の前立腺肥大が見られます。50から60歳の男性ではおよそ50%となり、加齢するごとにその数字は上昇していきます。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
 小便が通るチューブの役目の男子の尿道は前立腺組織で囲まれています。前立腺が肥大して行くに従い尿道が締め付けられBPH症状が引き起こされるのです。結果的に排尿が困難になり、BPHの男性は膀胱にたまった尿をすっかり排出することが困難になります。この肥大症の折り紙付きの症状は、夜中にトイレに起き出すことなのです。
肥大症への挑戦状
 実は私自身の前立腺に起きつつある非ガン性前立腺肥大症と呼ばれる良性のBPHのコントロールを一般的な医薬品や手術で対処するよりもハーブ療法のほうがより良く効くのではないかという信念で自分自身に賭けをしているんです。処方箋薬のファイナステライド(商品名:プロスカー)やテラゾシン(同:ハイトリン)成分のものがドル箱商品になってきている理由は50歳を越えた男性にBPHを引き起こす原因の前立腺細胞の過増殖を予防する効果が認められている唯一の医薬品だからなのです。
 私がプロスカーという現代医薬品に対してハーブで代替治療できるものにソーパルメロット、リコリス、パンプキンの種子などが有効であると挑戦的に発表したのは、FDA(米国食品医薬品局)がその薬を承認したすぐ後の1990年初期の頃でした。そのころ私はFDAやNIH(国立衛生研究所)の10人以上の役人が参加する公式協議会で公然と上記の意見を発表していました。そしてBPHという症状に最適の答えは処方箋薬だという風に考えていない支持者を求めてもいました。同時にソーパルメロット、リコリスとパンプキンの種子をバターに混ぜ込んだ自称“前立腺ナッツバター(後述)”は医薬品の“プロスカー”の服用と同様の効果があることを自分自身の前立腺の肥大の防止に役立つことで証明することを宣言しました。より安価でしかも安全なことも言いたかったのです。
 少しムキになって自分の前立腺を証明に使おうとした別の理由として自分の一生を通じての信念を貫き通したかった、つまり製薬メーカー寄りのFDA(米国食品医薬品局)は新薬をテストする場合に効果の比較にプラセボ(無効果の物質を比較対照薬として使う)だけでなくあまり知られていない種類のハーブを代替治療薬として使いハーブの価値をおとしめることを平気で行ってきたことに我慢が出来なかったのです。もしも合成医薬品がプラセボやハーブよりも良い効果があると証明されれば、良質と判断され薬の承認がおりるのです。でも、ハーブ類の方も合成薬よりよい結果か、さもなくば同等の効果が認められればハーブ療法ともに認可されてしかるべきなのです。研究開発に投資した金を取り戻すために、製薬業界は新薬と同様に処理したハーブエキスを特権的にマーケットに出すことを許されています。
 こんな環境でも私たちは、常に高価な医薬品と普通に安く入手できるハーブ代替治療薬のどちらでも選ぶ権利をもっているのです。BPH症状の医薬品の“プロスカー”には年に800ドルの費用がかかります。反面一年間にかかるソーパルメロットとリコリスの費用はそれよりもずっと小さな負担で済むでしょう、それにハロウィーン祭の時だったらカボチャの種の収集もたくさん出来ますね、ただ少し汚れるでしょうがなにぶんたタダだから少しの我慢をしてください。
 現代薬の“プロスカー”や“ハイトリン”が作られるまでは、医学界で認められたBPHの治療は外科的な方法だけでした。良く知られる手術の中の一つは、前立腺の経尿道切除術(TURP)といいます。
 (訳者注:そのほかの代替外科的アプローチには尿道内ステント、マイクロ波温熱療法、高強度収束超音波温熱療法、レーザー切除、電気蒸発、とラジオ周波数蒸発が適宜使われています。)
 TURPは65歳を越えた患者さんに一般的に行われている方法のようです。TURPの手術は尿道に器具を通して肥大した前立腺を切り離し、尿道を拡張することで排尿を容易にする事です。TURPは一般的には良い結果を出していますが、治療費が高額になりさらに術後障害も5から10%の頻度で発生、術後の回復には1,2週間を要します。医薬品の“プロスカー”や“ハイトリン”は手術よりは安く精神的な負担を小さくするので代替治療として広く使われるようになりました。でも、ハーブの方がもっと安いんですよ!
ハーブでの経験
 医薬品の働きは男性ホルモンのテストステロンを、関連する物質で前立腺細胞の増殖を活性化するジヒドロテストステロンに変換する内分泌腺の働きを抑制して前立腺細胞の激増を抑えることなのです。医薬品が細胞の異常増殖のプロセスを抑制するのと同様にナチュラルな代替物質も同程度以上に働くことをちょっと言っておきましょう。実際、私の意見も多くの自然療法を取り入れた内科医たちもハーブは大いに良好な結果を出していると考えています。また、特にプロスカーははっきりとした欠点があります。ほとんどの患者はこれを飲み始めてから症状の改善を自覚するまでに少なくとも最低6ヶ月は続けなければなりません。しかも100%全ての患者さんに効くわけではないのです。プロスカーを飲み始めた男性の半分以下の方が、一年間の長期服用でようやく著しい臨床学的な改善を体験したとのことでした。
 プロスカーにはまたいくつかの不安な副作用があり、性的欲求の減少、射精時障害、勃起不良などを起こす可能性があるのです。対照的に、ソーパルメロット、リコリスやカボチャの種子などのハーブでは、これらの服用が原因でどんな問題も報告されていません。
前立腺肥大症のための緑の薬局
 
ここでは何の副作用の心配もなく良い結果が期待できるハーブ類について詳しくお話ししましょう。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ リコリス(Licorice/ Glycyrrhiza glabra カンゾウ)
 リコリスにはテストステロンからジヒドロテストステロンへの転化を抑制する成分を含有します。それでも長期間、非常に大量のリコリスの服用をつづけると頭痛、無気力や過度のカリウムの消耗や血圧の上昇をもたらします。この様な例が世界中の医学文献から25件報告されたり、リコリス入りキャンデーを数年の間毎日50から100グラム食べている人たちに障害があったとの報告がありました。
 あとで出てくる“前立腺ナッツバター”でもどんな問題が出てくるか疑わざるを得ないのですが、私自身で試した限りでは問題のある症状は経験していないです。
 もしもあなたが、BPHにこのハーブ治療を試してみるときにはどんな症状にせよ自覚されたらリコリスの量を減らす様にして下さい。
★★★ パンプキン(Pumpkin/Cucurbita pepo カボチャ)
 パンプキンの種子はブルガリア、トルコやウクライナ地方ではBPHの伝統的な治療法でした。
 必要量は成人では一日一握り程度で良いでしょう。パンプキンの種子の油脂には強力な利尿剤として働きますが、この点に関しては尿量を増やしてもBPHの改善には寄与しないと主張する人もいることは事実です。
 パンプキン種子には他にキューカビタシン(cucurbitacins)というテストステロンからジヒドロテストステロンへの転化を抑制する成分が含まれています。
(訳者注:このキューカビタシンという物質にはペットの駆虫効果があります。カボチャの種子を食べさせるか、すりつぶして煮出した液を濾過して浮いた油を除いて出来た液をペットの皮膚につけて上げます。ペットに安全な駆虫剤と言えるでしょう。)
 更に、パンプキンの種子半カップには必須ミネラルの亜鉛が8ミリグラムも含有。
 自然療法師でもありシアトルのバスティーユ大学の学長でもあるジョセフ・ピゾーノ博士はマイケル・マーレー博士との共著“自然療法教書”の中でBPHの改善には亜鉛を一日60ミリグラムとると良いと述べています。(上記の亜鉛の摂取量は一日の量としては過量なので、この方法を試す前には医者とよく相談すべきでしょう。)
 亜鉛は前立腺のサイズを小さくしますが、おそらく前記のホルモンの変換プロセスを抑制するのでしょう。パンプキンの種子にはアミノ酸類(アラニン、グリシンとグルタミン酸)も多く含有しています。ピゾーノ博士とマーレー博士の研究でそれらのアミノ酸類をそれぞれ200ミリグラム毎日摂取した45人の患者は、この養生法でBPHの症状を大いに和らげる結果を得たと論文で述べています。カップ半分のパンプキンの種子にはアラニンが1150から1245ミリグラム、グリシン1800から1930ミリグラム、グルタミン酸が4315から4635ミリグラムも含有するのです。これはお医者さんが勧める一日必要摂取量の5から20倍にもなります。これが私が強くお勧めする“前立腺ナッツバター”にパンプキンの種子をたくさん使う理由が味付けに良いだけではない理由です。
 他にも有用なアミノ酸類を含む食用の種子類があります。バッファロー・カボチャ(Buffalo gourd)の種子には上記三種の栄養素がたっぷり含み、ピーナッツとゴマにはグリシンが豊富、アーモンドやバターナッツ、ピーナッツにはグルタミン酸の含有率が高いことが知られています。
前立腺ナッツバターの作り方
 あなたはピーナッツバターを塗ったクラッカーは好きですか?スナックのように毎日むしゃむしゃ食べてもいいなと思っていませんか。もしもイエスならなにより、これだけでも良性前立腺肥大症(BPH)の“自然の良薬”を知らずに楽しんでいるのです。このピーナッツバターに三つの材料パンプキンの種子、ソーパルメロットとリコリスを加えるとBPHの予防と治療に役立つことになります。
作り方は、カップ半分の生のパンプキンの種子をフード・プロセッサーで挽きます。
ソーパルメロットのカプセル1個を開けて中身をその中に加えて、リコリスのエキス数滴を落としてなめらかになるまでブレンドします。(更に使いやすくするためにお好みでブラジルナッツ油を数滴加えても良いですね。)
これらの材料は健康食品で入手できるものです。この前立腺ナッツバターは毎日大さじ2杯程度、クラッカーやパンにつけてもよいし、ゼリーに添えてデザートとして召し上がっても良いでしょう。
いつも新鮮なものを食べたいので、一度にたくさん作りすぎないよう必要なだけその都度お作り下さい。二、三日分ずつ作ると良いでしょう。
★★★ ソーパルメロット(Saw palmetto/Serenoa repens ノコギリヤシ)
 プロスカーが処方箋薬としてFDAに承認されてから薬品問屋はこれ以外の処方箋のいらないBPH治療薬を禁止し全て店から引き上げてしまいました。その禁止の理由には二つあったと言っているのはインディアナ州ウエストラファイエットにあるプルド大学のバロ・タイラー薬学名誉博士です。その理由の一つ、FDAの主張はこれまでの店頭販売薬(OTC)には有効性を示すいかなる臨床結果も存在しない。もう一つは、薬の流通企業の説明として、「従来のBPHの店頭販売薬には病状の悪化への進行より薬の効き目が間に合わないから」というものでした。テイラー博士はこう述べています「FDAの見落としたことは、西ヨーロッパではある種のフィト・メディカル(植物をベースにしたくすり)はBPHの治療に有効性を示すかなりの臨床結果例があり、患者はそれらのものを使って十分満足できるレベルの結果を得ていることです。おそらくフィトメディカルの中で一番知られているのがソーパルメロットでしょう。尿量の増加も含めてこのハーブの有益な効果は残尿量の減少と排尿回数の低下をもたらします。」
 米国南東地方の主にフロリダのエバーグレードに自生するソーパルメロットは小型のパームツリー(ヤシの木)です。セミノル・インディアンはこのソーパルメロットの種を食物として食べており、おそらくは伝統的な経験で泌尿器系の病気の解決に役立つことを知っていたのでしょう。それを見た白人は身体にたまりすぎた水分を排出する利尿作用を知り、いつしかBPHの治療に使うようになりました。その働きはテストステロンがジヒドロテストステロンへ変化させる酵素(テストステロンー5―アルファ還元酵素)の働きを抑制する酵素成分を含んでいるからだと思われます。このテストステロンの転換を予防するにはもちろんプロスカーのような現代薬も可能ですが、ソーパルメロットはそれとは異なる作用でしかも強力な効果を発揮している様なのです。
 今ではよく調査研究されて来たのでソーパルメロットの効力は(ヨーロッパでは)一般にも良く知られるようになっています。そのうちの研究の一つに、二千人以上のドイツ人BPHの患者の臨床試験でソーパルメロットの種子1から2グラムを毎日投与(抽出エキスで320ミリグラム相当)したところBPH症状のかなりの低下を見たと言うことです。
★★ ピゲアム(Pygeum/Pygeum africanum 詳細不詳)
 ある研究で、ドイツの研究者がBPHの患者250人の男性にピゲアムとプラセボ(偽薬)とを投与しました。プラセボのグループは、31%の人たちが症状の改善を報告、この数字はプラセボの一般的な反応の範囲でした。反面ピゲアムのグループでの数字は66%でした。ピゲアムの樹皮のエキス50ミリグラムを一日二回が最適な投与量とされました。エキス抽出の方法と濃度にもよりますが、1キログラムの樹皮からは1グラムのエキスが取れるようです。
 エキスは自然食品店から入手は可能ですが、原料の樹木はその効果の大きさから乱獲による絶滅の危機にある種となっています。このハーブを使いたいと思われる前に、この章で紹介しました他のハーブをまず試みてください。
★★ スティンギング・ネットル(Stinging nettle/Urtica dioica セイヨウイラクサ)
 ある研究の成果によるとスティンギング・ネットルの根茎エキスをつかってBPHの治療に良い結果が得られたとのこと。その研究で60歳以上のPBHの患者67人へ毎日このハーブのエキス液をティースプーン数杯摂取させたところ夜中に排尿に起きる回数が劇的に減る事がわかりました。このハーブはテストステロンの変質を抑制する効果を表したのです。
 ドイツの医療ハーバリストはBPH症状の改善にこのエキスを毎日ティースプーン2,3杯とることを勧めています。