ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
(訳者注:口腔乾燥症(Xerostomia) 唾液分泌腺の機能が正常でないために起こる口の乾燥。主として更年期以後のご婦人に多い症状です。唾液の分泌が少なくなり、色々の障害が出てきます。)
 ブラジルのチュピ・グアラニ・インディアンには唾液の分泌を促進するジャボランジと呼ばれる植物を使う習慣があります。事実、チュピ語でジャボランジとは「よだれを垂らす」という意味なんです。米国歯科研究所(NIDR)の研究員がたまたま植物民俗学者からジャボランジのことを聞くと、大変興奮したと言います。(植物民俗学者とは異文化圏で医療に使われる植物を研究する植物学者のことです。)ジアロストミアという医学用語で知られるこのドライ・マウス症候群は多くの人たちが経験しているのではないでしょうか。NIDRの研究員達は常に唾液の分泌を刺激する新しい物質に目を光らせているのです。ジャボランディは有望な感じがしたそうです。ジャボランジ(学名:Pilocarpus)の成分にはピロカルピンと呼ばれる唾液の分泌を促す成分が含有しているのです。参考になる研究に、ピロカルピンには唾液の分泌量を10倍も増加させるので、口内の乾燥による不愉快な感覚を手軽に和らげる効果があることを示しました。
 明らかにジャボランジには更なる研究に値する植物でしょう。実際に私がジャボランジについて調査したときには自分自身がとても興奮したものでした。この素材とチューインガムを合体すればドライ・マウスの対策になるし、この症状の数百万人の患者さんの症状の改善になりそうだと思いめぐらしたのです。しかし、私にもNIDRに対しても落とし穴があったのです。
 ブラジルでは成分のピロカルピンはある種の緑内障の治療薬に使われるために、この供給には実質上の独占権で守られていて、貴重な生木の輸出は許可される状況ではなかったのです。もし、ブラジル国内で供給をコントロールしていれば、価格も同様にコントロールされるでしょう。彼らがジャボランジから抽出したピロカルピンを独占的に輸出することが自国の利益になるから、ブラジル政府が生木を輸出することを禁止して、よその国で抽出されたピロカルピンの為に価格が崩れることを防いでいるのです。結果としてジャボランジは絶対にブラジルからは入手出来ないことがわかったのです。私がいろいろ輸出を試みたことは「神のみぞ知る」です。眼科医のジョン・ホプキンスをはじめジャボランジがもつ抗緑内障への作用に興味のある数人の友人と私とが仲間になって、ジャングルの国ブラジルにある貴重な植物を追いかけて行ったのです。いろいろ行動したところ当局の妨害によって我々の努力は中止の憂き目に遭ったのでした。
 しばらくした後に、ついにPilocarpusと同種の植物をパラグアイで入手することに成功したんです。しかし、ふたたび落とし穴に捕まってしまった。米国農務省(USDA)の私の同僚が、輸入した柑橘系のジャボランジの木に巣くうウィルスの為に国内の柑橘系植物へ疫病などが蔓延するのでは、と注目したのです。彼らは私の植物を廃棄処分してしまいました。
 一年後、このジャボランジの木を"研究材料"という理由でなんとか米国内に入れることに成功したのです。しかし再び農務省のウィルスに神経質な役人達が動きましたが、今度は彼らの説得に成功、貴重な植物は燃やされずにすみました。その代わりに、彼らはその植物をある場所に隔離、そこは私が勤務していたベルツビル研究所という所でした。私のジャボランジは長くそこに住み続けて、私が失った研究意欲を再び取り戻したのです。私が退職後、その植物の隔離処分が解かれたのを知りました。ジャボランジの木は払い下げられ、私の運転するトラックに揺られて我が家の裏庭に移植されたのです。この木はすばらしい植物でした。
 一方、ミネアポリスにあるMGI Pharma社がピロカルピンをベースにした口腔内用の給湿剤を開発、サラジェム(Salagem)という商品名を付けました。それは米国食品医薬品局(FDA)から承認を待っている状態のようです。おそらくその薬は成功するでしょうが、反面私の庭やブラジルでのジャボランジの人気の方はしぼんでいくでしょう。
 ドライマウスは不愉快なだけでなく、あなたの健康のためにも良くないのです。唾液は口中のバクテリア数をコントロールし、大げさに言えば虫歯や歯周病、口内感染症の予防に役立っているのです。米国内の約25%の中高年の人たちがドライマウスの苦情を持つと推測されています。私のように日常的に講演を行う人間にとってドライマウスはついて廻る症状なので、演壇には水差しとコップは欠かせないのです。もちろん加齢にも関連しているし、高血圧やうつ病の多くの薬を含めて広く使われている医療薬品の400以上もの副作用の中の一つでもあるのです。加えて、ドライマウスはしばしばリウマチ性の関節炎に関連したシェーグレン症候群の症状でもありドライアイを引き起こすこともあるのです。
ドライマウスのための緑の薬局

 もしもですよ、あなたがブラジルでドライマウスの症状が出たら、ジャボランジを口の中でかじるとよいでしょう。米国内では、FDAがピロカルピンを承認するまでは、特に食事時やおしゃべりするときには頻繁に水をすするのがよいでしょう。コーヒーや甘味飲料は避けること、ドライマウスを悪化させます。それからアルコールやたばこ、塩辛い食べ物も避けること。加えて以下のハーブを試してください。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★エキナセア(Echinacea/Echinacea エキナケア)
 エキナセアの成分の一つエキナセインには唾液の生産を促進することが証明されています。チンキ状のものをジュースに数滴垂らして使うと良いでしょう。もし、生木が手にはいるならば根の部分を噛んでいるのも良いです。
 唾液腺を刺激するのに加えて、エキナセアは飲用後に口にしびれたような感覚を残しますが、この現象は一時的で害のないものです。
★イブニング・プリムローズ(Evening primrose /Oenothera biennis メマツヨイグサ、ツキミソウ)
 イブニング・プリムローズから取ったオイル(EPO)にはガンマリノレン酸(GLA)という成分がとても豊富なのです。幾つかの医学論文には、GLA(ガンマリノレン酸)には自分のからだ自身を自身の免疫系が攻撃する原因の、自己免疫系の混乱を正常化する高い可能性を疑うことが出来ないと著しています。シェーグレン症候群は自己免疫系の障害による症状だと考えられています。シェーグレン症候群が原因のドライマウスにはEPO(メマツヨイグサ油)を試す価値はありますね。自然食品店でこのEPOを入手することが出来ます。使用法に従ってください。
★ マルチフローラ・ローズ(Multiflora rose/Rosa multiflora ノイバラ)
 中国ではこのドライマウスの治療のために乾燥ハーブティースプーン2杯から4杯程度をカップ一杯の沸騰したお湯に入れてとろとろと煮詰めたものを飲用します。
★ レッド・ペッパー(Red pepper/Capsicum アカトウガラシ)
 カプサイシンというトウガラシの辛み成分には唾液腺を刺激するだけでなく汗や涙なども激しく分泌させます。より辛いほどカプサイシンの含有は多いです。
 あなたのお好きなジュースやお茶などの食べ物にレッドペッパーを混ぜ入れると良いでしょう。
★ヨヒンビ(Yohimbe/Pausinystalia yohimbe)
 このハーブはアフリカの民間療法で、勃起作用と唾液線を刺激する作用のために催淫薬として使われます。現在、多くの米国人がヨヒンビンを使用、ヨヒンビのエキスで勃起不良を治療しており、これは容易に入手できます。もしもドライマウスの治療にこのハーブを使いたければ、かかりつけのドクターにヨヒンビンの処方箋を出してもらうことをお勧めします。乾燥した樹皮状のハーブのままを使うときは含有する毒性アルカロイドに注意が必要です。