ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 この章を始めるに当たって苦痛をいやしてくれるハーブについて注目できる2つのお話をしたいと思います。
 私には糖尿病の父親を持つ友人がおります。糖尿病をもつ多くの人々のように、足への症状へと進んだ友人の父親の足指は重傷の潰瘍になり、ドクターは切除手術を勧めたのです。その友人が私のところへ来て、父のそんな思い切った治療を避けてハーブを使った代替治療が無いかとたずねたのでした。私は注意深く言葉を選んで、彼女に「私は植物学者として処方する立場にはないけれど」と伝えました。でも、「足指の切断の前にコンフリーを試してみたら」と付け加え、このハーブは糖尿病性潰瘍には患部への湿布でも浸け置きでもいいのです。彼女の父親はその通りにしてちょうど一週間後、彼女から連絡があり足指は驚くほど改善されたということでした。ドクターは切断手術のプランをキャンセルしてしまいました。
 更にもう一つのお話ですが:ある金曜日の午後に私のハーブ園にボルティモアのテレビ・クルーが薬用ハーブの取材にきていました。インタビュアーはコンフリーのところに来てこれは何に効果があるのですかと尋ねて来ました。
「潰瘍やいろいろの傷、特に無痛性の潰瘍に使うと遅効性ですが治療効果が得られます」と答えました。
 私は次の畑へと行こうとしましたが、そのとき私の右側のすねにあった痛みも無い潰瘍のことを思い出したんです。それはめくれあがったかさぶたで固まった潰瘍で、それ以上悪くもならないけれど、良くもならない症状を示していました。何週間も同じ状態を保っていたんです。カメラが回っているときにジーンズの裾を上げてその潰瘍を見せたんです。そしてコンフリーの葉を何枚か摘んで手でよく揉みボール状にしたものをこすりつけたのです。すりむけた潰瘍は血がにじみ始めました。カメラはまだ回っていたので、近くにあった収れん性のあるゼラニウムをすこしむしり取って揉み込んだものを止血のためにこすりつけたのです。それはすぐに効いてくれました。取材班とわたしはほかのハーブに話題を移しましたが、ちょうど三日後の月曜日には潰瘍は完治していたのです。コンフリーの話は自分自身にこんな体験が無かったら信じていなかったでしょう。
 科学者として、私にはこの治癒効果がコンフリーなのか、こすった作用か太陽光、ゼラニウム、またはコンフリーとゼラニウムの相乗効果または単なる幸運なのかは確信できていません。でも、つぎの機会にどんな種類の頑固な潰瘍にも直面したら自分のハーブ園へ行きコンフリーとゼラニウムを試して見ることを間違いなくお約束しましょう。
皮膚潰瘍のための「緑の薬局」

 そうですね。私の意見を申し上げてご理解頂ければと思います。潰瘍の治療に使えるものとして、コンフリーに加えてたくさんの種類のハーブがあることを申し上げる必要があります。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ カレンデュラ(Calendula/Calendula officinalis キンセンカ)
 コミッションEというドイツ政府へハーブの薬効と安全性に関するアドバイスを行う専門家集団はこのカレンデュラを潰瘍の治癒時間を早め炎症を軽減する効果を認めています。花部は煎じ液や軟膏、チンキとして外用に使われます。カレンデュラはまたブドウ球菌の感染症を予防するのです。
 数週間前に、ウエスト・バージニアに住むハーバリストのジム・フォルツ氏が私にカレンデュラの軟膏を送ってくれたんです。コミッションEのように彼の家族全員がこのハーブが潰瘍の治療には大変優れていると信じているのです。そのことは私がアマゾンへの旅行の時に実感することができました。その旅行に参加した人とのワークショップの時に「ペルーのやけどの木」の名前の由来を説明するために、その木の内側の樹皮の一片を剥いて取り、私の右足首に巻き付けたのです。巻き付けたとたんにその樹皮が皮膚に触れた部分が火がついたように感じました。少し後に水疱になったやけどは何かに感染したようです。そのときにポケットの中のカレンデュラの軟膏に気づいてそれを塗り込んだのです、その結果十分に効果があったことがわかったのでした。やけどをした患部はとても心地よくなりました。
 カレンデュラを含有した市販のたくさんの種類のクリームや軟膏を入手することができます。ただし、使用上の注意をよく読んでください。
★★★ コンフリー(comfrey/Symphytum officinale ヒレハリソウ)
 コンフリーには潰瘍や傷の治療に長い歴史があります。その原因はアラントインという細胞の再生と成長を促進する成分が含有するためです。さらに、アラントインは免疫システムを刺激して抗炎症作用も持つのです。植物に含有するタンニンは収れん作用があり、これも影響しているかもしれません。私にはコンフリーが悪党なのかスーパースターなのかはわからないのです。
 このコンフリーには、もしこのハーブを食べると重い肝臓障害の原因になるピロリジジン・アルカノイドと呼ばれる成分が発ガン物質になると指摘する専門家からはとても悪く言われているのです。でも、ほかの専門家たちで、このハーブを外用に使うことで外科手術の切開を含めて潰瘍や切り傷の治癒スピードを速めるコンフリーのそのパワーを賞賛する者もいるのです。コンフリーを外用に使う理由はあると思うし、使っても危険はほとんど無いと考えています。飲用したときはそれ相当の大きな危険を冒すことになるでしょう。しかし内服に関しての忠告は出来ても、そうすることを止めることはできないでしょう。
 ただ、内服することが危険だという簡単な理由でコンフリーを外用に使うのも乱暴に禁止することがあれば、私たちはとても薬効のあるすばらしいハーブを失うことになってしまいます。コンフリーの生葉を湿布にしてもよいし、濃い浸出液にして洗浄するとよいでしょう。
 ドイツのハーバリストのルドルフ・フリッツ・ワイズ氏によると、より重傷の足の潰瘍の治療には最初の数日は生葉と根部を湿布にして使うことを勧めています。その後、コンフリーが含有する軟膏に切り替えるかコンフリーをペースト状にしたものを患部に塗布して包帯で堅く縛るとよいでしょう。
★★★ ドラゴン・ブラッド(Dragon's blood/Croton lechleri 和名不詳)
 これはアマゾンから来て、スーパースターにのし上がったハーブの一つです。ラテンアメリカでは広く使われていますが、米国ではまだ見つけるのは難しいようですが、もうすぐにポピュラーになると期待しています。
 ドラゴン・ブラッドは現在南サンフランシスコにあるハーブを主原料とした製薬会社のS・P社(Shaman Pharmaceuticals)で2種類の医薬品の原料として研究が進められています。あいにくほとんどの製薬会社のように、S・P社はハーブの成分全てを使用するよりは、ハーブの中の単一成分を化学的に抽出する“魔法の弾丸”方式でやっているのです。
 私の友人のペルー人のシャーマン、アントニオ・モンテロ・ピスコはドラゴン・ブラッドの成分を分離して使うよりはハーブ全草を使うことを勧めているのですが。もちろん私もそう思います。
 熱帯のペルーにいるときには、切り傷や擦り傷を作ったときにはいつもハーブ全草を使っているのです。
★★ カモマイル(Camomile/Matricaria recutita カミツレ)
 ほとんどのアメリカ人はこのハーブを、もしも使えるときには味の良いお茶にして飲むものと考えているのです。でも、カモマイルは抗炎症効果はもちろんですが、免疫活性作用や防腐効果としても良いのです。ヨーロッパでも下肢潰瘍の治療には広く使われているのです。カモマイルのエキスで使われるのが主流ですが、濃いお茶での湿布も同様の効果が得られます。
 お茶を作るにはカモマイルの生花を手のひらに大盛りか、乾燥ハーブをティースプーンに数杯をカップに入れて沸騰湯を入れます。冷めたものを漉して殺菌布に浸けて使います(布の包帯があればよいです)。
 あなたが花粉症のときは、カモマイルの製品は注意した方が良いでしょう。カモマイルはブタクサの近縁種なので、アレルギー反応の引き金になることもあります。もしも、初めて使うときには反応を注意深く見てください。そして反応が良いようであれば更に使っても良いでしょう。しかし、もしかゆみや刺激があり、悪化するようでしたら使用を中止してください。
★★ カントリー・マロウ(Country mallow (Sida cordifolia )
 この針状の多年生雑草の葉には粘液状の水溶性繊維が含有しているので湿布にして使うと潰瘍を鎮静する効果が得られます。加えて、私が精通している分野での一般には非公開の研究結果によるとこの植物は広い範囲の防腐パワーがあるので潰瘍の治療にはとても役に立つとわかっています。
★★ ギンコー(Ginkgo/(Ginkgo biloba イチョウ)
 ドイツの人たちは脚の潰瘍などにはギンコーを大量に服用しますが、その理由はとても良い結果が得られることと毒性が無いことです。是非ためしてみましょう。
 このハーブを使うには健康ショップで50:1のエキスを買う必要があります。(活性成分は現在の所十分に濃縮しているものはありませんが、生葉の使用を保証しているものを選んでください。)一日60~240ミリグラムの範囲で飲みますが、この量を超えないようにしてください。ギンコーの大量服用は下痢やイライラ、不眠症を引き起こすおそれがあります。
★★ ティー・ツリー(Teatree/Melaleuca 多種あり)
 私はね、数ある新進気鋭のハーバリストとして売り出し中なんです、というのは消毒薬として救急箱に“ティーツリー・オイル”を常備薬として入れているからなんです。これは実に良いものだと確信を持っているのです。ティーツリー・オイルはとても広範な種類のバクテリアに対して有効性を示すのです。中にはティーツリーオイルに肌が反応する人もいますので、良質の植物性オイルをティースプーン2杯ほどに数滴を落とし薄めてから使うことをお勧めします。もしもそれでも肌に刺激があるようでしたら、使用を止めてください。
 このティーツリーオイルは内服は出来ません、またどんなエッセンシャルオイルも内服しないでください。それらは極めて濃縮されているので、ほんの微量でも有害なものの種類が多いのです。
★★ ゴーツ・コーラ(Gotu kola /Centella asiatica センテラ、ツボクサ)
 ブラジルなどの臨床試験ではゴーツ・コーラは皮膚潰瘍や手術創、壊疽(えそ)、移植皮膚、外傷や皮膚損傷などの治療に有効なことがわかっています。このハーブは皮膚下層の正常な結合組織の再生育力を刺激するのです。活性成分はアシアチン酸という名前の植物トリテルペノイドです。
 お使いになるときには市販されているゴーツ・コーラの標準エキスの製品を入手することをおすすめします。エキスを外用に使用するには、綿球をエキス液に浸けて患部全体に塗ってください。ゴーツ・コーラを飲用することも出来ます。この場合はパッケージやビンの説明書の指示に従ってお茶にするなどして使ってください。
★ティー お茶(Tea /Camellia sinensis チャ)
 ティーにはドラゴン・ブラッドに含有するものと同じ成分が多種含まれています。それは消毒作用や収れん作用で皮膚の治癒力を促進するのです。お茶にして飲んだ後のティーバッグを湿っているうちに患部に当てて置きます。